
どうも犬星です。
現在闘病により休職中の薬剤師です。
今日は薬局の裏側を少し解説したいと思います。
皆さんは
「待合室に誰もいないに⚪︎時間待ちです」
もしくは
「人はまばらなのに⚪︎時間待ちです」と言われた経験はありますか。
わたしはいう側の人間でした。
そしてよく患者さんから言われた言葉は
「え?たった1種類なのに?」
「誰もいないじゃないか」
「いつもの薬なんだけど」
「「なんでそんなにかかるの?」」
その疑問について、薬剤師の目線から説明したいと思います。
目次
- 薬局という場所
- 待ち時間がかかる理由その① 受付での確認事項の多さ
- 待ち時間がかかる理由その② 見えない待合室にいる人
- 待ち時間がかかる理由その③ 処方箋には「重さ」がある
- 待ち時間がかかる理由その④ 一包化と粉薬
- 終わりに
薬局という場所
わたしが勤めていた薬局は大体月2000枚くるドラッグストア併設の面薬局(目の前に特定の病院がなく地域の真ん中にあるような薬局のこと)で
日に換算すると約80〜100枚を常時薬剤師4人、調剤事務1人で回していました。
開局時間は朝の9時から夜の9時までの12時間。
1時間に平均すると6枚〜10枚、患者さんが集中する時間(夕方など)はありますが
単純に10分に1人は来局すると思ってください。
医薬分業(病院の中で渡されず処方箋を出して外で薬をもらうシステム)になってから
患者さんは処方箋を持って薬局にいらっしゃいます。
待ち時間がかかる理由その① 受付での確認事項の多さ
処方箋にはたくさんの情報が詰まっています。
処方された薬はもちろん
患者さんの保険情報、氏名、生年月日、処方もと、処方医名、処方医の印鑑の有無、
有効期限(原則処方された日から4日以内)、ジェネリックにして良いかどうか
お子さんの場合体重は何キロなのか。
これらをまず受付時に確認します。
上記の情報のどこかしらに不備があると、その処方箋は受け付けられないからです。
来局された患者さんが初めてだった場合、
こちらには病院のカルテがないため初回アンケートをお願いする必要があります。
今はマイナンバーカードによって処方歴を確認できたり、保険情報もオンライン上で確認できたりとかなり時短することができるようになりましたが
それも一度パソコンで処方箋に記載されている情報を入力してから出ないとわかりません。
いつも利用してくれている方の顔と内容はある程度覚えているので、処方箋の不備がないか、処方内容の変更がないかを確認します。
そして
現在すでに受け付けている処方箋の量と考えて待ち時間を伝えます。
また、すでに処方箋を預けている場合、同姓同名の方もいらっしゃるのでいつ受け付けたのか(もし番号札などあればそれを照らし合わせて)確認する必要があります。
待ち時間がかかる理由その② 見えない待合室にいる人
これが「誰もいないのに⚪︎時間かかります」の最大の理由です。
見えないだけで実は、受け付けている処方箋が山ほどある場合があります。
処方箋を持って行った際「後で取りにきます」と言った経験はありますか。
この「あとで取りにきます」と行った人が見えない待合室にいる人です。
これは医療業界だと薬局特有のものだと思います。
病院では本人を視る必要があるため当然その場にいなければなりません。
席を外して自動的に「あなたは風邪ですね」とは言われませんよね。
でも薬局は違います。
「後で取りにきます」と言えば時間が経つと薬は用意されています。
また、今はオンラインで処方箋を送って後で原本を提出する予約システムもあります。
こういった見えない待合室にいる人を準備しているため、待合室に誰もいなくても調剤室内は常に稼働しています。
待ち時間がかかる理由その③ 処方箋には「重さ」がある
この「後で取りにくる人」がいつ来るのかが薬局の業務では重要となってきます。
処方箋をただ単純にきた順番で調剤すればいい訳ではないからです。
「処方内容につき順番が前後します」と見聞きしたことはあるのではないでしょうか。
実は処方箋には「重さ」があります。
湿布薬と痛み止めだけの「軽い」処方もあれば
10種類以上を1回の服用ごとに1つの袋に分けて(一包化)しかもそれが1日3回90日分の「重い」処方があります。
この「重い」処方の方がたて続きに3人きて、「軽い」処方の人が4番目にきた場合
単純に順番通り進めていたら4番目の人はきっと数時間待ちを余儀なくされるでしょう。
そのためどの処方を優先するべきか、優先順位を考えながら調剤を進めることで
できるだけ円滑に業務が進むように薬局内では行われています。
「軽い」処方を持って来局されても「重い」処方を先に持って来局された方が1時間前に来ていたら、たとえ軽くても、重い処方を待っている見えない患者さんがいる以上待ち時間が発生しますことがあります。
待ち時間がかかる理由その④ 一包化と粉薬
先に話が出たように1回の服用ごとに分ける作業のことを一包化(いっぽうか)と言いますが、一包化の場合、時間がかかります。
これは大きな薬局(大学病院の門前など)では自動の機械が導入されている場合がありますが、わたしが務めていた薬局のような場合、基本的には薬剤師の手作業で行われるからです。
例えば10種類の薬を1日3回、90日分の処方があったとします。
すると薬剤師は10✖️3✖️90の2700錠をプチプチとアルミから取り出しています。
そしてもちろんそれが間違いが起こらないように処方箋と照らし合わせながらです。
その後、袋詰めされたものは不備がないか、ゴミは入っていないかなどのチェックをします。それを薬局では監査と言いますが、これも3✖️90の270包分を確認します。
数字で見るだけでも時間がかかりそうなのはわかっていただけたでしょうか。
また、粉薬も時間がかかります。
粉薬は主に小児に出ることがありますが、小児の粉薬の場合原則体重で量を決められています。
薬剤師は調剤に取り掛かる前にまずこの体重に見合った処方なのかを確認しなければなりません。だから受付時に「お子さんの体重は何キロか」聞くのはこれが理由です。
そして粉薬は一包化と同様に処方枚数が多い薬局では自動で薬を計量して調合してくれる機械が存在しますが、これも基本的には薬剤師が計量しています。
出来上がったものは監査に回され、小さなゴミでも入っていたら(コンタミと言います)もちろん作り直しです。
口に入るものですからね。
特に乾燥する冬場は静電気で別の薬が入り込みやすく作り直す頻度が増えたりします。
(一回一回調剤するたびに付属の掃除機で掃除はしていますがそれでもコンタミは起こります)
終わりに
以上が「待合室に誰もいないのに⚪︎時間待ちと言われる」大体の理由です。
他にも当日に受け取りに来なかった方が次々に受け取りに来ていたり
処方箋自体に不備や確認しなければならない場合にもお時間をいただくことがあります。
時間をいただく場合は他にもあります。
たとえば12時に処方箋を持っていったらその処方内容で飲み合わせが悪いものがあって医師に確認する必要があるのに、病院自体が午後3時からしかやっていない、とか。
薬剤師は独断で処方を変えることは法律上できません。
処方箋に書いてあることは絶対で、ボールペンで二重線で消されているだけでは不十分で印鑑が必要であったりなど厳格に決められています。その場合も電話やfaxなどで医師に確認しなければなりません。
待ち時間が長くていつも申し訳なく思っています。
そしてご協力、ご理解いただきありがとうございます。
「誰もいないのに待たされる」
それには理由があるということを少しでもこの記事で知ってもらたら幸いです。
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